長期化する、広がる、増える円形脱毛症。症状を止め、回復に向かうための方法
こんにちは。円形脱毛症は単発で治る場合もありますが、脱毛部分が増えたり、髪が生えてこない期間が長期化することもあります。その理由は、免疫の異常を止めることができていないことで、そこには免疫寛容という仕組みの破綻が考えられています。回復するには何が必要でしょうか。
円形脱毛症は、脱毛が単発で短期間に治る場合も少なくないわけですが、症状が重症化することもあります。
例えば、脱毛したところから何年も髪が生えてこない、脱毛部分が広がっていく、脱毛部分が増えて、つながったりする。頭全体に脱毛が広がることだってあります。
重症化しないためには、何をすべきか。特に円形脱毛症の初期の段階で考える必要があります。原因を理解して、どんな治療が効果的なのかを知っておきましょう。
目次
円形脱毛症は原因が理解されていない
私は円形脱毛症のことをネットで調べてみました。ぜひ、調べてみてください。おそらく、「原因は解明されていない」と出てくると思います。だから効果的な治療法もないと言う話も出てくる。
ですが、これでいいんですか?理解する努力が必要だと思いますよ。
何を隠そう、私自身が長年、円形脱毛症に悩み、原因を深く考えずに、病院に治療を任せてきた患者の1人なんです。その結果、今も円形脱毛症は治っていませんからね。頭にはハゲが複数あって、多発型と呼ばれる症状がある。
結局、原因が曖昧で、治療法も曖昧。円形脱毛症が重症化するのは、ここに原因があるんですよ。これは患者としてもそうだし、お医者さんにも同じことが言えるのではないかと思っています。
ちゃんと理解されていない病気だし、ちゃんと理解しようともされていない病気。そんな状態で簡単に治るわけがないんですよ。
Point
円形脱毛症を理解しようとしないから治らない!
重症化する円形脱毛症の理由
重症と言ってもいろいろな方向に行きます。なかなか髪が生えてこない場合、つまり症状が長期化するケース、脱毛が広がっていくケース、多発型になっていくケースなど。全身に脱毛が広がることもあります。
重症化するのはなぜでしょうか。原因を突き止めて、改善することをしていないからだと思うんですね。
自己免疫疾患とは
円形脱毛症の原因を調べたことはあるでしょうか。「自己免疫疾患」です。では、自己免疫疾患とは何でしょうか。免疫が自分自身を攻撃することなんですね。
免疫は自分を守るために備わっている仕組みなのに、自己免疫疾患を発症すると、自分自身を攻撃してしまうものになってしまうんです。
毛包へのT細胞による攻撃が見られるのが円形脱毛症の特徴です。T細胞というのが免疫(細胞)のことで、本来はウイルスなどをやっつけるのが仕事です。免疫にはT細胞だけではなく、B細胞とかNK細胞とか、樹状細胞、マクロファージといった種類があります。これらをひっくるめて「免疫」というわけです。
これらの免疫細胞がそれぞれの役割を担って、巧妙に敵を退治するのが本当の姿です。だけど、一部の免疫が暴走している状態。これが自己免疫疾患ですね。
さらに円形脱毛症が重症化するということは、どういうことでしょうか。
T細胞という免疫による毛包への攻撃を止めることができていないということでしょう。暴走している免疫をそのまま放置しているから、脱毛がより重症化しながら進行してしまうわけですよね。
Point
円形脱毛症は免疫による毛包への攻撃を止められないと重症化する!
なぜ髪が生えてこないのか
私は円形脱毛症になってしまうのは仕方のないことだとも思うんですね。遺伝も関係があるでしょうし、それは風邪をひくようなもので、誰にでも起こりうることじゃないかと思う。
だけど、その後が大事です。免疫の異常を止めて、正常な状態に戻すことが必要になります。
ただ、髪がすぐに生えてこないことはまた別の問題です。髪が抜けてすぐに生えてくるのは、抜けた髪のすぐ下に次の髪が準備できているときです。
それはヘアサイクルという髪の周期によって準備されているわけで、突然の免疫細胞による攻撃を想定しているものではないわけです。だから、すぐに髪は生えないんですね。
一方で、大事なのは、それ以上に脱毛を進行させないことです。長期化したり、重症化すると、治りにくいとも言われるのですが、止めるためには円形脱毛症の原因と言われる自己免疫疾患をどうにか改善する必要があります。
Point
円形脱毛症を重症化させないためには自己免疫疾患を改善する!
なぜ自分の細胞を攻撃するのか
そもそも、なんで自分の細胞や組織を免疫が攻撃するのでしょうか。普通、免疫というと、病気の原因となるウイルスと戦ってくれる強い味方のイメージがあるんですよね。
確かに免疫は、自己と非自己を見分ける機能があって、自分でないもの、例えばウイルスや細菌を体内から排除する働きがあります。でも、それだけではありません。
もう1つ重要な働きを担っています。円形脱毛症を理解するには、どちらかと言えばこちらの方が重要だと思います。それは自分の体の中にある異常な細胞を排除するという役割です。
免疫が自分の細胞に対して働く(攻撃する)ことも、決して珍しいことではないんですね。
正常な細胞を攻撃する免疫は異常
では、自己免疫疾患は何が問題なのでしょうか。
自己免疫疾患は、正常な細胞や組織に対しても攻撃することが問題なんです。実際には異常な細胞というのは、日常的にかなりの数が生まれていると言われています。
参考:
最近では、がん細胞は、健康な人のカラダでも多数(学説によっては1日に5000個も!)できることがわかっています。がん細胞ができると、そのつど退治しているのが免疫細胞(リンパ球)です。
つまり、体を作る細胞はどんどん作り変えられますが、その作り変える時にエラーが起こることは頻繁にある。それが普通の状態です。
だけど、病気にならない、健康でいられるのはどうしてか。それは免疫が異常な細胞を排除してくれているからなんですね。
Memo
具体的には、DNAという遺伝子があって、それを設計図として、細胞が作られています。ところが、DNAが損傷して情報が変わってしまうこともある。そうすると、設計図が正しくない状態が起こります。そうして異常な細胞が作られます。それを放置しておくと病気になってしまう可能性があります。そこで免疫が働いて、異常な細胞は殺してしまいます。
ウイルスを排除するだけでなく、自分自身の細胞をもちゃんと監視して、健康を維持するために働いているのが免疫なんです。
問題は正常な細胞も攻撃してしまうということ。髪には何も問題がないのにもかかわらず、免疫細胞が攻撃する。そして髪が抜けてしまう。こうして円形脱毛症が発症しているわけです。
自己免疫疾患と免疫寛容の仕組み
自己免疫疾患での免疫異常とは、どういったことでしょうか。それは「免疫寛容の仕組みが破綻した状態」だとされています。
免疫は自分自身の正常な細胞は攻撃しないようになっているんです。それが本来の形。ルールがあるんです。この仕組みを「免疫寛容」と言います。免疫が攻撃しないようにすることですね。
自己免疫疾患が近年増えている状況もあり、免疫寛容の仕組みについての研究も進んでいます。どのように免疫が自分自身を攻撃しないようにしているかもわかってきています。
(1)胸腺での負の選択
免疫が作られる場所は決まっています。胸腺もその1つです。体の中の胸腺というところで、「負の選択」というものが行われています。これはテストのようなもの。
自分の細胞に対して反応してしまうT細胞は胸腺にいる間に排除されます。死んでしまうようにプログラムされているそうです。胸腺での負の選択によって、自分に対して強く反応する免疫はなくなる。はずなんですけどね。
そのテストを通り抜けてしまうものもいるわけです。その場合は、次の手があります。
(2)樹状細胞によるアナジー誘導
樹状細胞というのも免疫の1つなんですが、これが「どうも悪さをしそうだな」というT細胞を見つけてくれます。そして見つけたら、麻痺させてしまいます。これをアナジー誘導と言います。
樹状細胞は抗原と言われる、免疫の攻撃対象となるものをT細胞に提示する役割があります。「これはどうですか?」とT細胞の前に差し出すんですね。自分の細胞を提示されたのに、T細胞が反応してしまうと「不合格」というような具合です。
こうして、また攻撃的な細胞は少なくなります。しかし、これでもまだ自分自身を攻撃するものは残ります。
(3)制御性T細胞
T細胞に対して指示を出す細胞があります。それが「ヘルパーT細胞」と言われる細胞で、司令塔のような役割を持っています。そのヘルパーT細胞の中で、免疫の働きを抑制するように働くのが「制御性T細胞」と言われるものです。
「Treg(ティーレグ)」と言われ、この細胞が自己免疫疾患では、かなり注目されている細胞なんです。
このようにT細胞が自分自身を攻撃しないような仕組みは体にもともと備わっています。それなのに攻撃しているのが自己免疫疾患なんですよね。
円形脱毛症で言えば、毛包を攻撃してしまうT細胞がいるということ、そしてその攻撃を止めるための「免疫寛容」が正常に働いていないことが原因なんです。
Point
免疫寛容の仕組みが破綻していると円形脱毛症が起こる!
制御性T細胞とは
制御性T細胞について、もう少し見てみましょう。
制御性T細胞は、免疫の抑制を行います。免疫の攻撃が強すぎる時には、その力を抑制するんです。こうすることで、免疫が自分自身を攻撃することを止めるんですね。
つまり、制御性T細胞が正常に働くことで、免疫による自分自身への攻撃を止められることになります。
逆に、制御性T細胞に異常があれば、免疫は暴走するわけです。体にとって害のないものにも反応する花粉症などのアレルギーや円形脱毛症の原因とされる自己免疫疾患を引き起こすものと考えられています。
円形脱毛症を回復に向かわせるには
円形脱毛症に話を戻して、その回復のためには何が必要かを考えてみてください。どうして重症化してしまうのかということですね。
そこには免疫寛容の破綻があるんですよね。その中でも注目されているのは、制御性T細胞の存在です。体中に存在する制御性T細胞は胸腺でも作られますが、それだけではありません。消化管でも作られています。私はここがポイントだと思っているんです。
胸腺というのはストレスに弱いと言われているんですね。そして、円形脱毛症にはストレスが関与していることが多い。また、円形脱毛症を回復するためには、ストレスは邪魔になっているとも言えます。
ストレスを受けた時に、胸腺がどれだけの機能を持つのかはわかりませんけど、新潟大学の安保徹教授の見解によると、ストレスの中では消化管で作られる免疫が中心になると言っています。
さらに、最近の免疫の研究において注目されているのが何か知っていますか?
腸内環境なんです。免疫の約70%は腸で作られると言われています。制御性T細胞も腸内で作られているんですね。制御性T細胞が作られるには腸内細菌が関与しているという研究もあります。
円形脱毛症を重症化させないためのヒントがここにあるような気がするんですね。
Point
円形脱毛症の改善には腸内環境が重要!
まとめ
円形脱毛症は単発型で終わらずに、多発型や全頭型などに重症化したり、髪が生えてこない期間が長期化することもあります。その理由は、免疫の異常を止めることができていないことで、そこには免疫寛容という仕組みの破綻が考えられています。
中でも注目したいのは制御性T細胞という免疫抑制に働く細胞です。この細胞が正常に働くことで、自分自身に対する免疫による攻撃を抑制することができます。制御性T細胞は胸腺でも作られますが、腸でも作られており、回復に向けて腸内環境の改善が効果的ではないかと思われます。
この記事のポイント
- 円形脱毛症を理解しようとしないから治らない!
- 円形脱毛症は免疫による毛包への攻撃を止められないと重症化する!
- 円形脱毛症を重症化させないためには自己免疫疾患を改善する!
- 免疫寛容の仕組みが破綻していると円形脱毛症が起こる!
- 円形脱毛症の改善には腸内環境が重要!